記録:What’s a ZINE? 2

―イベントの終わりに―

今、2022年9月と10月の2カ月連続で開催したイベント「What’s a ZINE?」(以下、ワツジン)を終えようとしている。10月21~23日の会場開催、その後の事後通販を終え、いよいよご出展者さまに作品をお返しするところまでこぎつけた。

お預かりしていた作品をレターパックで発送するとき、「お世話になりました、本当にありがとうございました」という気持ちで送り出す。少し寂しい気持ちになる。前回(=ワツジン1)でもその気持ちはあったけれど、今回(=ワツジン2)はあとのイベント予定がないことから、余計に寂しさがあった。どうか無事に戻るべきところへ戻ってほしい。

そんな、ワツジンロスになりそうな気持ちをここに書き残しておこうと思う。


2カ月連続

ワツジン1の会場開催が始まる前に、ワツジン2の準備はすでに進んでいた。送受信するメールがどちらのものなのか、注意が必要だった。

2カ月連続のタイトなスケジュールになったのは、利尻の冬が迫っていたからだ。6年も住むと島の四季についてもだいたい把握できてくる。冬になれば、ホワイトアウト(風雪による視界不良)や全線通行止めということも少なくない。

主催のふたり、淡濱社の濱田と魔術書工房の永都さんは同じ島内に住んではいるけれど、町が異なる(利尻島には二つの自治体がある!)。つまりイベント開催となると車での移動が必須となる。イベントの日が晴れるとは限らないし、無理をして何かあっては困る。

それに、冬場はフェリーや飛行機が欠航する頻度も増えることから、作品をお預かりすることを前提としたイベントにはなかなか難しい時期でもある(到着や発送の大幅な遅れ)。

そんな事情もあって、初主催にして2カ月連続といったなかなか奇異なスケジュールとなった。


―10月21日―

ワツジン1のときと同様、風がない。波もない。穏やかな天気で初日を迎えられた。

イベント会場となる利尻町定住移住支援センターツギノバのオトノバ。1カ月ぶりで少し懐かしい感じがした。

2回目ということもあり、準備は前回に比べて格段に速く、スムーズに終えられた。ご来場者さまをお迎えする準備が整い、一息ついた頃。

「また来ました」

前回にも来てくださった方々が再びやってきてくれた。ワツジンイベントを楽しみに来た。そんな様子が伺えて、とても嬉しかった。前にも増して、ゆっくり作品を楽しんでくれ、あれやこれやお話しながら気に入った作品をお買い求めいただいた。

午後には、地方紙の日刊そうやの記者の方が取材に来てくれた。

会場イベント終了の数日後、ワツジンのことが記事として掲載されていた。町の人にも「新聞見たよ」「そういうことやっているなんて知らなかったよ」と声をかけていただくこともあり、次回(あれば)につながるのではと感じている。


観光シーズンを終えた利尻。正直、前回と違って観光の方が立ち寄る可能性はほぼない。「何かやってそうだから立ち寄ろう」という状況は生まれないだろうことは想像に難くなかった。

島内の方にどれだけ足を運んでいただけるかに頼るしかなかったけれど、ご来場者様の姿が見えたとき安堵できた


―10月22日―

前日の夜中、警報級の大雨と強風と雷で利尻は大荒れだった。心配でなかなか寝付けなかったけれど、朝を迎えると天気はすっかり穏やかになっていた。

会場の外の木々を飛び交う野鳥の声が心地よく、日差しの暖かい日となった。

開場とほぼ同時にご来場者さま。前回は別々に来ていたが、今回は予定が合ったとのことでご一緒だった。ワンドリンク制ということもあり、ホットドリンクを飲みながら見本誌を楽しみ、談笑しながらお昼近くまで会場にいてくれた。

午後には、前回仕事で来れなかったという方が。作品たちを随分興味深そうにひとつひとつ見てくれているようだった。その方が文房具や色に関心があることが話しているうちにわかり、話も盛り上がった。

少し賑やかな会場にまたひとりご来場。前回、イベント会場内の動画を撮って、Vlogとしてあげてくれていた方だった。こうして再度遊びに来てくださる方が多かったのもとても嬉しいことだった。


―10月23日―

自宅から外に出ると、虹がかかっていた。会場の駐車場からも虹が見えた。なんだか良いことがありそうな予感。きっと無事にイベントを終えられる。

風はない。けれど天気雨。海側は青空なのに山側は曇天。晴れているのに雨降り。風は冷たいけど穏やか。そんな秋らしい変わりやすい天気で最終日を迎えた。

日曜日ということもあり、午前中はご来場者さまがいなかった。朝はゆっくりしたい気持ち、とてもよくわかる。それに、どうやら町内の中学校で文化祭が行われているらしかった。そんなわけで午前中は誰も来なそうだ、と思っていたところに、意外なお客様がやってきた。

白と黒の毛並みがきれいなネコだった。換気のために少し開けていたドアの外で会場内を見つめるまんまるの目。しばらくじっと、探るように見つめていた。思わず覗きにいって逃げられてしまったけれど、素敵な来訪者だった。

午後になると、ご来場者さまの姿が。

はじめてお会いする方で、どこでイベントを知ってくださったのか……ご来場早々、目をキラキラさせて作品を手に取ってくださっていた。そんな姿を見ていると、イベントを開催して良かったと心から思えた。その方は、お買い求めいただく作品のおまけについて「どれも素敵で捨てがたい」と悩ましげだったのも印象的に残っている。

少し風が冷たくなって、利尻山には雪が降っているのではとストーブの温度を上げた頃。前回来てくださった方がお友達とともにご来場。感想をたくさん教えてくださったり、気になることを聞いてくださったり、隅々まで楽しまれていた。そして、帰りがけ。「すごく楽しいイベントですね!」と笑顔と共に嬉しいお言葉をいただいた。


―終わりとこれから―

今回のご来場者さまの印象としては、とにかく滞在時間が長いということ。作品を丁寧に、ゆっくり楽しみ、主催や共に来た方と談笑をする。そんな、素敵な空間と時間を提供できていのではとしみじみ感じている

「イベント」としては、傍から見れば動員数も少ないかもしれない。周知も足りていないかもしれない。それでも、再度ご来場いただいた方も多く、新たな方との出会いもあった。

主催ふたりがあまり無理のない範囲で。大きすぎず、しっかり対応できる規模で。ここは今後も変えずに活動をしていきたい。

次回以降の予定は今のところはないけれど、やりたい気持ちはもちろんある。ただ長い冬を超えないと、主催側もご来場側も大変だ。雪解け、春の気配を感じた頃にでも前向きに考えていけたらと思っている。


ここには記していない感想については、永都さんとやっている「利尻 紙◇本ラジオ」8回のアーカイブでも話しているので、こちらもお聞きいただけたらと思う。